学生と工作機械
「公平に」、「安全に」、「丁寧に」

現在の担当業務を教えてください

グループとしては、機械系共通担当というグループに所属しています。業務としては、主にマニュファクチュアリングセンター【※1】で、機械工学科およびシステムデザイン工学科の実験・演習(工作機械の使い方の実習授業)を担当しています。また授業以外では、理工学部全学科を対象とした学生・教員の研究に必要な実験装置や試験片等の作製、機械加工に関わる相談や技術補助、学生向けの機械加工の講習の実施など、機械加工に関わる様々なサポートを行っています。

【※1】マニュファクチュアリングセンター:主に金属材料加工用の工作機械を備えた機械工場です。工場に設置されている機器は理工学部4年生以上でしたらどなたでも利用できます。詳しくはマニュファクチュアリングセンターWEBページをご参照ください。

慶應の技術職員になったきっかけは?

大学時代の専門は機械工学で、機械加工系の研究室に所属していました。大学卒業後は、民間の工作機械メーカーに約6年間勤めまして、その後慶應の技術職員に転職いたしました。転職のきっかけとしては、当時一緒に働いていた先輩が、他大学の機械工作を専門とする技術職員に転職したのですが、その時に「こういう仕事もあるんだ」と興味を持ったのがはじまりです。その後、いろいろと大学の技術職員について調べていくうちに、この仕事は、自分のこれまでの知識や経験を存分に活かせそうなこと、自分にとっても今後幅広い知識や技術が習得できそうなこと、学生をはじめ人と人との繋がりの中で仕事が行えそうなことがとても魅力に感じました。数ある大学の中で慶應を選んだ理由は、大学としてレベルが高いということもありましたし、私の友人に慶應出身がいるのですが、その友人が「学生と教員・職員の仲がいい」と言っていて、その部分に惹かれた部分もありました。

仕事上、特に心がけていることは?

「公平に」、「安全に」、「丁寧に」を心がけています。
学生には、機械加工が得意な人もいますし、不得意な人もいます。元気な学生もいれば、おとなしい学生もいます。そういったいろいろな学生がいるなかで、関係者として、支援に偏りがないよう、そして学生全員を手助けできるよう「公平」な対応を心がけています。また、私たちが教えている工作機械による加工は、場合によっては危険も伴いますし、使い方などを間違えれば大怪我の原因にもなります。そういった意味で「安全」はとても重要で、怪我や事故が起きないようにいつも注意しています。そして、技術面においては「丁寧」で質の高い支援の提供を心がけています。私たちが教えた学生たちは、今後社会に出れば「慶應義塾大学出身」という名前を背負っていくことになります。社会に出たときに、まわりから「慶應出身は優秀だな!」といってもらえるような人物になるように、ひとりひとりに質の高い支援ができればと常に考えています。

教育現場とものづくりの魅力
学生と成果を共有

仕事をしていて一番うれしかった瞬間は?

学生が研究のための装置などを製作する際に、いろいろと加工相談や技術サポートをするのですが、その完成した装置で「こんな研究成果がでました!ありがとうございました!」と御礼と共に報告に来てくれるときはとてもうれしいですね。自分が製作した「もの」や、製作を支援した「もの」による成果を確認できることは、機械工作の支援に携わる者として、とてもうれしいですし、純粋に直接感謝されることは、今後の業務へのモチベーションにも繋がります。 こういった、ユーザーに近い場所での仕事は、なかなか民間企業では体験できない部分だったので、大学の技術職員の魅力のひとつかなと思っています。また、私たちは、学校行事(入学式や卒業式など)の式典のお手伝いなども場合によっては担当することがあるのですが、かつて機械加工をサポートした学生が立派に成長して卒業・就職していく姿をみるのはとても感慨深かったりします。こういった部分も学校に関連する仕事の魅力だと感じています。

また、最近では、学生、教員と技術職員でサイバスロン【※2】という国際的競技大会に参加していて、先日の電動車いす部門の日本大会で3位入賞を果たしたことはとてもうれしかったです。実は大会前日のリハーサルではマシントラブルでゴールできなかったのですが、本番で無事ゴールにたどり着いたときは、一生忘れることはないぐらいうれしかったです。

【※2】サイバスロン(Cybathlon)…義足や義手、車いすなどの医療・アシスト機器を使った障害者がパイロットとして出場する国際競技会です。インタビュー時は、日本大会を終え、2020年のスイス大会に向けて新しい車いすの機体を開発中の時期でした。詳しくはサイバスロンプロジェクト特設ページをご参照ください。

技術職員になって大変だったことは?

マニュファクチュアリングセンターには、ボール盤やフライス盤などの汎用工作機械から、最新のNC工作機械までさまざまな種類の工作機械が設置されています。私が入職して1年目の年はマニュファクチュアリングセンターが開所した直後で、最新の工作機械が一気に6台導入されました。メーカー、機械の種類もすべて違っていたので、それらの操作や特徴などを覚えることはとても大変でした。今までに使ったことのある工作機械もありましたが、学生に教える立場になりますと中途半端な知識では成り立ちませんので、改めて勉強しなおしました。そして、担当する授業では、それらすべての工作機械の特徴を理解したうえで、学生の演習内容をコーディネートする必要があり、「○○を作らせれば面白いんじゃないか」とか「××の工程を入れればもっと知識が身につくんじゃないか」とか、毎日遅くまで残って話し合っていました。試行錯誤を重ねて、何度もリハーサルを行い、演習資料を作ったり、教え方を工夫したり、とても大変でしたが、やりがいも非常にありましたし、あの経験が今の自分に繋がっていると感じています。

技術職員という仕事
技術を通じて人と社会に貢献

今後、どのような技術職員になっていきたいですか?

大学の技術職員は、縁の下の力持ち的な存在なので、世間からはこのような職業があることはあまり知られていないのかもしれません(特に日本では)。しかし、理論から実践への橋渡しとしてとても重要な部分を担っており、教育・研究支援の技術的な要として貢献していきたいと考えています。そして、教員・職員・学生から信頼される技術職員になれるよう、日々精進していきたいと思っています。

技術職員を目指す方へのメッセージ

この仕事は技術を通じて、人(学生・教員)や社会に役立てる仕事だと思っています。大学には様々な分野の教員の方がいらっしゃいますし、学生の研究内容も多種多様でバラエティーに富んでいます。産学連携では企業の方と協力することもありますし、同じ職場で働く同僚の専門も、機械、電気、物理、情報、化学、生命など、とても幅広いです。企業の技術職では特定の専門技術に関わることが多いですが、この職場ではさまざまな「技術」と「人」に存分に関わります。その両方が好きな方には大変お勧めな仕事だと思います。また、先ほど話題に上げたサイバスロンプロジェクトのように、いろいろなことにチャレンジできる環境でもあります。「人」や「技術」に関わりながら、何事にもチャレンジしてみたいという方は是非一緒に働きましょう!